創業の想い

野外教育を学び始めた頃(宮城県花山キャンプ場にて。2000年夏)

※鯖街道・・・福井県小浜市・若狭~京都に続く古い街道



子どもたちと作ったチームで1つの「鯖街道」ネームタグ。福井県小浜市から京都を結ぶ街道を歩く

場所や環境、価値基準によって、同じ人間でもパフォーマンスが一変する。
ものさしは、世の中に一つではなく、複数あっていいんだ。

私が株式会社YAGAIを設立したのは、アウトドア活動そのものを広めたいからではありません。登山やキャンプの技術を教える事業でもありません。

関心があるのは、人がどのような状況で普段とは異なる力を発揮するのか、チームの関係性がどのように移ろうのか、そしてその変化をどのように日常の仕事や活動へつなげるかという部分です。

その意味で、野外フィールドには、日常の役職や立場、慣習から強制的に離れざるを得ない「非日常性」、計画通りに物事が進むことがない「不確実性」、頭で考えるだけではなく身体を用いる「身体性」がデフォルトで用意されていて、人や組織が変化を起こしやすい舞台になります。

勇気を持って場に異論を投じる人。普段とはひと味違う特性を発揮して驚きを与える人。周囲が投げ出しても諦めずに最後まで解決行動を取り続ける人。チームがどのように情報を共有し、役割や責任を調整するのか。そうした個人やチームの行動が、日常場面とは異なる形で現れます。

私にとって野外は目的地ではなく、人と組織を理解し、新しい行動を試し、日常を変化させるための実験フィールドです。

筑波大学内キャンプ場「野性の森」

理由は、野外教育の価値を社会へ届けるためには、教育や研究の専門性だけでなく、顧客の課題を理解し、価値を伝え、対価を得て事業として成立させるビジネス領域の力が必要だと考えたからです。


当時、野外教育の分野では、専門性を高めながら安定したキャリアを築ける選択肢が、大学や公的機関以外に十分に整っているとはいえませんでした。

「そんな状況を変えたい。」

あえて外の世界へ出て、自分が苦手だと自覚していた営業やビジネスを学ぶ。そして将来は、ビジネスの側から野外教育に貢献する。それが、当時描いていた計画でした。


当初は、10年ほど企業で経験を積んだ後に、野外教育に関わる事業を始めるつもりでした。しかし、実際には、それを形にするだけの力が私にありませんでした。そして、目の前の仕事や家庭、生活の諸々に向き合ううちに10年が過ぎ、いつしか20年近くが経過していました。


転機は、フリーランスとして独立し、3年ほど経過した2021年頃。
「雇われずに自分の力で生きたい」と独立した後の仕事は順調でした。顧客にも恵まれ、良い仕事と収入を得ることができました。その一方で、依頼された業務を着実に遂行するだけでは、自分自身が本当に形にしたいことができていないという感覚が、次第に大きくなっていきました。

自分は、この人生で何をしたかったのか。

そう考えたときに頭に浮かんだことは、20歳のときに出会い、自分の人生を変えてくれた野外教育でした。ビジネスの側から野外教育に貢献するという大学院修了時の熱い想いは、長い間、実行に移せないまま見ないふりをしていました。

正直、口だけの自分が情けないし、カッコ悪いなと。自分への約束も、尊敬する先輩への約束も果たしていない。



長野県白馬大池(OBJプログラム)
長野県物見岩(OBJプログラム)
長野県鑓温泉(OBJプログラム)

しかし、改めて野外教育の現場に戻って見えてきたのは、厳しい現実でした。
野外教育には豊かな研究知と実践知がある一方で、その価値を企業や社会へ広く届ける仕組みや、担い手が専門性を高めながら経済的に十分な報酬を得て長く活動できる市場に未だ成立していない。20年前と同じ課題がある。

そのことへの違和感は、やがて「誰かが変えるのを待つのではなく、自分が始めなければならない」という思いに変わりました。

十分な顧客基盤や、完成された事業モデルがあったわけではありません。成功できるという確信があったわけでもありません。それでも、自分が最初の一歩を担うと決めました。

その決断をしたとき、遠回りだと思っていた20年間の経験が、株式会社YAGAIの土台になることにも気づきました。

顧客の潜在的な課題を捉えること。専門的な価値を相手に伝わるサービスへと変換すること。人や組織の変化をハンズオンで支援すること。そして、正当な対価を得ながら事業として継続させること。

これらはすべて、野外教育の価値を社会へ届けるために必要な力でした。

野外教育の研究知と実践知に、ビジネスの世界で積み重ねてきた経験を掛け合わせ、新しい顧客、新しい仕事、新しい市場をつくる。

2005年、大学院修了時に思い描いた「ビジネスの側から野外教育に貢献する」という想いを、20年以上経た今、実行に移すために株式会社YAGAIを設立しました。(2026年7月現在)

株式会社YAGAI 代表取締役CEO

1979年、福井県生まれ。筑波大学体育専門学群、筑波大学大学院体育研究科にて野外教育を学ぶ。